話題の新作を発表したソウル・フラワー・ユニオン
RES52
 2001年7月25日、充実したアルバムとの前評判も高かったソウル・フラワー・ユニオンのアルバム『スクリューボール・コメディ』(リスペクト、写真)が発売になった。
『スクリューボール・コメディ』は、現在の日本のロック・シーンで確固たるメッセージと実力を兼ね備えたバンドが、世に問うアルバムだと言えるだろう。
 そんな最新作の中味を、リーダーの中川敬にインタビューした。
 インタビュワー:藤田正(Beats21)。
 
■どんとに捧げた「荒れ地にて」
----このアルバムのボーカル入れの前(2000年12月)に、Beats21は沖縄で中川さんをインタビューしてるけど、その時すでにアルバムの出来上がりに相当な自信を持っていました。結果として、そのとおりの内容になったね。
 アルバム間のインターバルがここまで長かったというのは、俺、初めてなんよ。86年にソノシートを作った時から、『Unchain』というアルバムはあったにせよ2年半も間があいたというのは、これまでなかった。そういう意味で(書き溜めていた曲の中から厳選しているから)、このアルバムは「ベスト・オブ・中川敬」だとも言えるんじゃないかな。
Beats21
----「荒れ地にて」という、これから長くうたっていけそうな印象的な歌もある。
 俺は日本のミュージシャンから殆ど影響を受けてないねん。ブリティッシュ・ロックかソウル・ミュージックばかり聞いてきて。ただ、一人だけ日本で影響受けたボーカリストがおんねん。それが「どんと」やった。俺は、Bo Gumbosがデビューした頃から彼らの関西のコンサートは全部見に行ってたし。俺に、これはかなわんと思わせてくれたのは「どんと」と、Bo Gumbosだった。俺自身のスタイルを作ろうと思わせてくれたのが彼やった。
----そんな彼が突然、亡くなって、そしてこの歌ができた。
 ボガンボスをカバーしたいなと。若い奴らはボガンボスを知らんからね。それで「トンネルぬけて」と「夢の中」「あこがれの地へ」と候補が3曲上がって、ラジオでかけたり、いろいろと考えてたんやけど、最後に、俺は彼に対して自分なりの「アメイジング・グレイス」を書けばいいと思うようになったんやね。その歌の中に自分史みたいなものも込めて。それで出来あがったのが「荒れ地にて」やった。ファンの人から、この曲は「あこがれの地へ」の盗作ですか?と聞かれるんやけど、もう何とでも言うてくれ、という感じやね(笑)。
----二つの歌には強い関連性があるよね。
「あこがれの地へ」で「どんと」が書いた詞も、1行ぐらいは引用しようと思ってたし。それは「もうひとりの君」という箇所やけどね。

■生き残った者たちが、どう生きるか
----なるほど。
 俺はバンドでやることを前提として曲を書いてんねんけど、たまに「これはイケてる」と自分で思えるのがある。「荒れ地にて」は「満月の夕」以来やね。バンドがどんなにひどい演奏しようが、楽曲は生きている、みたいな。
----でも、大きいショックをきっかけにして歌を作る時、往々にして独り善がりで「滑ってる」歌も多いのね。そういう点からすれば、中川〜ソウル・フラワーが、この歌をじっくりうたえているというのは、バンド全体の精神状態がいいんじゃないかと思う。
 詞の面で言えば、アルバム1曲目の「サヴァイヴァーズ・バンケット」もそう。ソウル・フラワー流、中川流葬儀の仕方というか。「野づらは星あかり」もそう。これは西岡恭蔵さんが自殺したことと、関係してんのね。
----首吊り自殺だっけ。
 彼が相棒を失って、ずっと追悼のコンサートをやっていた頃に、関西の『胡散無産』という雑誌に彼が原稿を寄せていた。俺、たまたまその文を読んでいて、その最後の方に、今彼女が生きていたら落ち込んでいないで次のことをやりなさいと背中を押されるだろうと。でもぼくは、この悲しみの中にいたい。そんなことを西岡さんが書いていた。俺、この文章を読んで、この人、ヤバイと思た。直感やけどね。それから1週間ほどして、新聞に自殺のことが載っていた。その時に書いたのが「野づらは星あかり」なんやけどね。
Respect Records
 西岡さんだけやないんやけど、片腕をもぎ取られたような男の悲しみ。男って幼児みたいな所、あるやん。そんな彼の自殺を知った時に、彼が一人でベンチに座っている光景が俺の頭の中で渦巻いたんよ。
 ただね、俺は死んだ者はしゃあないやん、とも思うのね。死んだら死んだや、ほな、生き残った者がどうすんねん、ということや。もっと悪い言葉を、あえて使うとすれば、自分が生きてゆくために俺らは、彼らの死を「利用する」しかない。ソウル・フラワー・モノノケ・サミットの活動にしてもそうやん。
----モノノケも阪神淡路大地震をきっかけにして作ったバンドだものね。
 こんなに悲惨なことが起こって。でも起こってしまったからには、それを生き残った者たちのためのプラスにつながるように活かして行きたいよね。
----だいたいソウル・フラワーというバンドの成り立ちがそうだし、今回のアルバムも、その特色がよく出ている。そしてメンバーの結束も感じられる。
Beats21
■もともとはパンク・バンドやったから
 間違いなく、バンドの状態はすごくいい。
----メンバーが、各自の活動を活発にするようになったのが、よかったのかも。
 いろんな要因があるんやろうけど、まずメジャーと契約が切れたことが大きい。明日のパンのことを必死に考えんとあかん立場になったからね。この事実を、俺らはいい方向に結びつけようと思った。だからソウル・フラワーの取材ぐらいは俺一人で引きうけるから、その間、メンバー各自が自分の好きなことできっちり仕事をしよう、なんて打ちあわせをしたもの。
----なるほど。でも、そういうのって普通はバンド解散の第一歩なんだけどね。
 まぁ、元からメジャー志向のバンドやなかったから。それが良かったのかも知れへん。
----もともとがパンクだから。
 それは80年代の後半。俺らがニューエスト・モデルやメスカリン・ドライブをやってた頃というのは、バンド・ブームまっさかりで青田買いの時代やった。俺のバイト先にも、いっぱいレコード会社の奴が契約しませんか?と来たわけや。でもその頃って、パンク・バンドがメジャーと契約するのなんか無茶苦茶にカッコ悪いことやと思ってたから。だから、これは絶対に呑めないような条件を突きつけたわけ。今回、キューン・ソニーと切れた時に、俺はあの頃を思い出したのね。そうや、俺らは最初からメジャーがどうのこうのというバンドやなかったな、と。
 もちろん、楽やなかった。相当に過酷なミーティングはやった。たとえば、曲のほとんどは俺が書いているから、著作権印税の差もあるわけや。キューンと切れた段階で、全然カネがないというメンバーもいたからね。
----そのアンバランスはキツいね。
 河村(博司)なんかはバンドを休止してほしいと言うたからね。自分が音楽で生きていくために、その用意のために時間がほしいと。俺も考えたよ。ただ休止はダメや。俺はお前らとやりたいんや、と。だから3ヶ月にいっぺんのペースで東名阪でライブをやって、その合間の2ヶ月間は、各自が好きなようにやろうじゃないか。こんな話をしたのが2年前くらいかな。
----そんなミーティングを経過したからこそ、今がある。
 奥野(真哉)はBonnie Pinkや「くるり」なんかをやってるし。それぞれが、自分の力を発揮してる。こういうことをソウル・フラワーのみんなが経験してきたから、みんながスタジオに集まると、いい音になるんだと思う。
(おわり)

( 2001/07/29 )

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