CD 登川誠仁『スタンド!』
Respect RES66
 沖縄伝統的歌謡の最高峰、登川誠仁の新作が発売された(2002年7月24日)。
 映画『ナビィの恋』の出演で人気を呼び…というお決まりの前置きは抜きにして、ここ数年間の登川の表現者としてのコンディションは、日に日に高まっていると言っていいだろう。
 その理由としては、大好きだったお酒を「止めた」こと(あるいは止められるようになったこと)や、これだけの実力者が、もう一度「歌にかけてみよう」と決心したことなどによるが、嬉しいことに、その結果が歌にはっきりと出ている。『スタンド!』は、そんな登川誠仁という、沖縄を代表するシンガー・ソングライター、あるいはブルースマンの「絶好調」を聴くアルバムである。
 ちなみに彼にとって連作となる第1作目『ハウリング・ウルフ』の題名は、ブルースの巨星、ハウリン・ウルフが元であり、続く『スピリチュアル・ユニティ』は、ジャズのアルバート・アイラーの名作のタイトルにちなんでいる。今作は、スライ・ストーンの名盤と同じだ。
新潮社
 ソウル・フラワー・ユニオンとの共演作品という側面もあった前作と異なり、本アルバムの眼目は、登川誠仁の歌のコクや、リズム感をじっくりと味わってもらおうというもの。
 彼独特の三線(彼の場合は六線)のタッチや、歌い方にもかなり配慮して録音されているから、大きな音量で聴けば聴くほど、この人のスゴ味が感じ取れるはずだ。
 遊女の嘆きのバラード「辻千鳥(ちーじ・ちじゅやー)」、昔ながらのお笑い歌劇「無学のおじさん」、故・嘉手苅林昌に捧げられた「酒ぐせ口説(くどぅち)」、孫娘たちとうたう新作「じいちゃん ばあちゃん」と、バリエーションも豊か。古い伝承歌から、新作まで、これほど自在にうたいこなせるシンガーは、なかなかいない。
 登川誠仁、いよいよ「独壇場」。そんなアルバム『スタンド!』である。

 また、このアルバムとほぼ同時期に発売されたのが、新潮社からの『オキナワをうたう 登川誠仁自伝』である。
 貧しい家庭に生まれたヤンチャ坊主が、戦乱の沖縄を生延び、どのようにして島唄のナンバー・ワンとなったのか、その70年を克明に描いた単行本だ。
 小さい頃から、親に怒られても沖縄の「歌三線」をやめることなく、伝承歌を独学で覚えたこと。
 米軍による占領下の時代、まだ10代の小さなガキにもかかわらず、米兵をふくめた大人たちを操り、大掛かりに米軍の物資を盗み横流しをしていたこと。
 60年代はフォードの大型車を無免許で乗りまわし、あっちのステージ、こっちの宴会と、酒は飲むわ、めちゃくちゃの散財はするわの大波乱の「兄さん」だったこと。
 ……そんな「民謡の大家」というイメージからはるかに離れた、「素晴らしきロック野郎」の姿が、瑞々しく浮かび上がるのがこの本。
 音楽本というジャンルを離れても、存分に楽しめる内容となっている。
(おわり)

Amazon.co.jp−『スタンド!』
Amazon.co.jp−『オキナワをうたう』
 
 

( 2002/07/25 )

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