暴走族みたいな名前の人権バンド
解放出版
<1999年4月>
 少し前のことになるが、山口県宇部市のウベニチ新聞のホームページをのぞいていたら、「願児我楽夢」という、まるで暴走族みたいなバンドの記事が載っていて、そのけったいな名前だけで興味をそそられたことがあった。
「願児我楽夢」と書いて「がんじがらめ」。いったいどんなパンク野郎のバンドなんだろう? 記事は今から二年前の九七年六月のものらしく、いわく「願児我楽夢は、小学校職員の宮崎保さんをバンドマスターにした活動で脚光を浴び、新聞で紹介された……」。この新聞記事がきっかけとなり、「小野小中学校の保護者、教職員が中心になって企画したユニークな同和研修が」行われた、と。
 失礼しました。願児我楽夢は、ツッパリ諸君などではなく、学校の先生らを中心にした人権の大切さを訴えるグループなのでありました。
 まぁ大変なぼくの早トチリだったわけだが、その後、願児我楽夢は本誌『部落解放』でも紹介されたりと、ぼくの住む関東圏にも彼らの風評が、少しではあるものの聞こえるようになった。
 本誌来月号でぼくは「水平歌(解放歌)」のことを書かせてもらう予定だが、その記事の最後に願児我楽夢の名前を出した。それは、彼らのような活動から新しい「水平歌」が生まれてほしいと思ったからである。ぼくは「水平歌」を取材する過程で、全国に人権をテーマにするさまざまな音楽活動があることを知ったが、なかでも積極的な一つが願児我楽夢であった(この原稿は、のちに単行本『メッセージ・ソング 「イマジン」から「君が代」まで』に収録された)。
 願児我楽夢は結成から三年間ですでにCDを、曲の重複はあるものの三枚も出し、(編集部によれば)各メンバーの有給休暇をフルに活用しながら、北九州を中心にライブ活動を行っているそうである(メンバーの職業は、教諭、学校職員、消防士など)。
 その完成したばかりの最新盤『心 Part2』を開けると、彼らがどんなグループなのかを知ることができる。
 まずバンド編成だが、先ほどの宮崎保をはじめとして、山中貢、林内隆二、瀧口準、宮崎裕之の五人が一枚目のCD『心 Best Selection』以来のメンバーとして名を連ねている。セカンドCD『熱と光を』からは、メンバーのなかに手話通訳もふくまれるようになり、最新盤には裏方も入れて総勢十一人の名前が挙がっている。編成は生ギターとキーボードを中心にした、いわゆるフォーク・バンド。サウンドはその名前が与えるイメージとは違って上品かつメランコリックだ。だが歌詞には、次のようなものもある。
「仲間は首をくくり 栄養失調になり 次から次へと 死んでゆく」
 これはアルバム『心 Part2』の中に入っている新曲「時の響きて」の一節。「時の響きて」はハンセン病患者に対するすさまじい差別を訴える。
 一枚目のCDでも歌われていた「いきゅんにゃ加那節」は、奄美の有名な別れ唄で、沖縄では「とぅたんかーに」としても知られている曲だが、これをメンバーの宮崎裕之(奄美出身)が、「行くんですか むこうの 土地へ」と、沖縄や奄美がかかえる問題を想像させるヤマト言葉を加えて歌っている。
「生まれくるあなたへ」「招かれなかったお誕生会」、新曲の「あした天気になぁーれ」などは部落差別がテーマだ。つまり願児我楽夢は、「人権・差別」にかかわる問題を多角的に歌いあげようとしているバンドなのである。
 願児我楽夢はスタイルとして七〇年代フォークの影響下にあるのだが、今後の課題として、曲調に変化を持たせ、言葉(詞)だけに頼らず、リズムと曲調それ自体にもメッセージがあることを学べば、彼らはより説得力を持つバンドになるはずである。
*『願児我楽夢/熱と光を』(2000円):購入問い合わせ先=山中貢氏(090-4987-0896)

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