HY---メジャー争奪戦の高校生バンドのライブを見た
CLRE-2001
「HY」という沖縄のラップ〜ロック・グループがいる。全国的には無名に近いが、沖縄県内の十代にはその名前が浸透しつつある存在である。
 2001年9月に発売された『Departure』(写真)は、そのこなれたポップ・センスが注目となり、メジャー各社も獲得に乗りだした。あるメジャー幹部に100万枚セールスも固いと言わしめた高校生バンドのステージを報告する。
「HY(エイチ・ワイ)」は、新里英之(ボーカル、ラップ)、仲宗根泉(ボーカル、キーボード)、名嘉俊(ボーカル、ラップ、ドラム)、宮里悠平(ギター)、許田信介(ベース)という編成による5人組で、現在はアマチュアとプロの中間といったグループである。
 名前は、「ヒガシ・ヤケナ」の略で、屋慶名とは本島東部にある地域の名前。彼らの拠点となる場所の名前をバンド名に選んだということだろう。
 沖縄の若いロック・バンドといえば、2001年後半の数カ月だけで新作を50万枚も売ったモンゴル800がいるが、HYはそれを追いかける存在であり、両者は東西の綱を張るバンドとすら言われはじめている。
 2月23日午後5時、コザ(沖縄市)の繁華街で、HYを中心としたフリー・コンサートが開かれた。
 会場はカラオケ屋さんの駐車場で、音は周囲に筒抜け。前座のラップ・チームから大音量でぶっ飛ばすが、近隣の住宅、商店から何のクレームもこない(ようだ)というのが、まずは驚かされる。通りの向こうでたたずむ人たち、HYの親族らしき一団、HYファンの中核をなすたくさんの中高生たちと、会場はなんとなく雑然としているが、これがコザの町風景とぴったりで実に雰囲気が良かった。
 HYは、よく「ミクスチャー系」という言われ方をする。男だけの4人で演奏する場合は、二人のラッパー〜ボーカリストを中心にしてかなりハードな側面を見せるから、なるほどそうだろう。だが途中から仲宗根泉が加わると、一転して柔らかなバラード・バンド的なアプローチとなるのが面白い。しかしそれは「なんでもアリ」、というのとも少し違うようだ。彼らのやり方を見ていると、自分たちが好きなものを追っていったら自然とこうなったというような無理のなさが魅力の一つとなっている。    
 これをイメージとして統一しているのが、音のエッジの「削り方」で、ハードな演奏を聞かせている時ですら耳をつんざくようなその音のカタマリは、トゲトゲしさを上手にカットし丸くして観衆に届けられている(特にCDでは)。だから、一見、暴走しているような歌でも、耳ざわりが良い。
 このようなHYの「中庸」であることをうまく応用した曲作りは、「ホワイトビーチ」「旅立ち」「兼久商店」といった代表曲のメロディ・ラインにもよく表われていた。
 新里と名嘉を中心とした舞台での何気ない会話や観客とのやり取りも、とても素直で、観ていてとてもほほ笑ましいものだった。
 沖縄ローカルの柔らかさを背景にした「優しさ」「まろやかさ」といったものが、きっとHYの背景にはあるのだろう。
 これが今、メジャー大手の争奪戦となっているHYというグループの、音楽的な芯なのではないかと思えた。
(文・藤田正)

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( 2002/02/28 )

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