あまりに高度な音楽性に圧倒される:初来日のモザイク
Beats21
文・藤田正

「世界最高のトラッド&ルーツ・ミュージック」というキャッチ・コピーに間違いはなかった。5人の男たちによるアンサンブルが聞こえてきたとたん、彼らの技量を超えた技量が胸を押してくる。この人たちは、まるで、違う…幕開けの第一印象が、終演まで変わりなく持続するコンサートというものは滅多にあるものではない。掛け値なしの素晴らしいミュージシャンと出会うのは、本当に嬉しいことである。       
 モザイクは、アンディ・アーバインとドーナル・ラニーが中心になって作られたグループである。私はこの二人がアイルランドでは国宝級の存在であることを、つい先日まで知らなかった。ソウル・フラワー・ユニオンの人たちに教えられ、続いてモザイクの1枚だけのアルバム『Live from the Powerhouse』を聞かされて、驚いたのだ。ソウル・フラワーの中川敬だけでなく、「くるり」の岸田繁ほか、たくさんのミュージシャンズ・ミュージシャンや、うるさ方が、絶賛する理由がようやくわかった。
 今回の来日は、そのソウル・フラワーの伊丹英子が個人として招聘した特別のツアー・イベントだった。ミュージシャンがミュージシャンに惚れて、その尊敬と連帯の意識だけで実現させた。もちろん、手弁当である。中川敬などは同じ舞台に立つ出演者であっても、(身内であるからなおのこと)宿泊の手はずも自分の責任において行ない、そして「国宝」たちは、関西では伊丹の家に合宿していたのである。

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 私がモザイクを見たのは4月8日の渋谷・DUOと、9日の吉祥寺・Star Pine's Cafeの2日間である。DUOは、伊丹の連続企画「つづら折りの宴」として行なわれ、共演がソウル・フラワー・モノノケ・サミット、山口洋、岸田繁、浜田亜紀子(GO!GO!7188)だった。吉祥寺は単独ライブである。
 まず最初に、各楽器の「鳴り」と「響き」に惹き込まれた。
 ブズーキ、ギター、フィドル(バイオリン)、ガッドールカー(ブルガリアン・フィドル)など、モザイクは弦楽器を中心にしたバンドだが、彼らは楽器それぞれの「才能」を十全に引き出してみせる。コード・ストローク、1弦1弦のピッキング、そしてアンサンブル…各楽器が、本当に楽しそうな「声」を出し歌っているのだ。この人たちは、本当に違う、そう思わずにはいられなかった。
 特異な音楽のブレンドにも目をみはるものがあった。アイリッシュ・ドラッド、アメリカン・フォーク〜古謡、そして東ヨーロッパの音楽が、手を変え品を変え変幻自在に飛び出してくる。中には16分の11拍子といった「自分でも、どうやって演奏しているのか分からない」(ドーナルの弁)という難曲(スレマンズ・コッパニッツァ)もあるのだが、それらはすべて「どうだ俺たち、上手いだろ」といった傲慢の発露ではなく、山の水滴が川となり海へ辿り着き再び水蒸気となるまでに無数の変化と変容をなすがごとく、摂理にかなっている。すなわち、その弦、その笛が、なぜそこで鳴っているのかが分かる。
 そう、曲の流れにまるで無理がない。それが、しみじみと凄いのである。
 アンディ・アーバインの柔らかなボーカルも良かった。2本のフィドルから始まる「旅は我が友」は、彼のアイドルであるウッディ・ガスリーの歌だが、未だ世界に存在するたくさんの「ファシスト」に向かって、リフは日本語で歌われた。
 このオヤジたち、カネや権威では動かない奴らなんだ。
 だからこそ、トモダチの呼びかけだけで日本にやってきた。
 一期一会のモザイク。欧米では大変な売れっ子の5人だけに、再び日本に来ることは、果たしてあるのだろうか。
(写真は、メンバーの許可を得て撮影したリハーサル風景)

deight records:http://www.breast.co.jp/deight/index2.html
Amazon.co.jp-『Live from the Powerhouse / Mozaik』

( 2005/04/20 )

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