８月３日に全米で公開され初登場第１位となった映画『ラッシュアワー２』のサントラが面白い（2001年７月28日発売）。
　デフ・ジャムがまとめたこのアルバムには、リュダクリスやスヌープ・ドッグほかヒップホップの有名どころがずらりとならび、しかも宇多田ヒカルも１曲うたっているという注目盤だ。
　映画『ラッシュアワー２』(日本公開は９月22日／写真）は、ジャッキー・チェンとクリス・タッカーという名コンビによるアクション・コメディで、監督は前作と同じくブレット・ラトナー。ラトナーは、マドンナの「Beautiful stranger」のビデオ・クリップでMTV作品賞を獲得したほか、相当数の音楽映像を手がけたことで知られ、デフ・ジャム関連のアーティストのクリップも多い。
　おそらく『ラッシュアワー』『ラッシュアワー２』のサントラを、ヒップホップ系の最大手であるデフ・ジャムが担当するのは、ストリート・カルチャーに強い影響力を持つレコード・レーベルのマーケットと映画のそれが重なっているという判断と、監督とレーベルとの関係の深さがあるはずである。

　CD『ラッシュアワー２』（ユニバーサル／写真）は、リュダクリスとネイト・ドッグによる「エリア・コード」から始まる。
　この映画のマーケティングがストリート系に深い関心を示していることが分かるのが、まずはこの歌だ。ロマンチックな、しかし相当にエロ系ギャングスター・ヒップホップである。
　電話のエリア・コードが替わるごとに、俺には別の女どもがいるとこの歌は「誇らしく」うたう。日本の歌詞では、そのように書かれてはいないが、女を「スベタ」と呼ぶ、極端なマチズモ・ソングだ。ただし、その言い方が大げさであればあるほどに、この歌は「ナンセンス・バカ男・お笑いソング」なのである。
　それにしても今回のサントラvol.2も豪華なラインナップだ。新進で人気バリバリのリュダクリスが終われば、モンテル・ジョーダンの甘いボーカルが聞こえてくる。

　メソッドマンにテディ・ライリーが組んだ「パーティ」もスピード感あふれ、バカバカシいほどにオカシい。
　注目の一人がキャンダイス・ラブ。ロドニー・ジャーキンズ・プロデュースによる「NO」は、デフ・ジャムが近い将来、彼女によって大ヒットを狙っている証拠でもあろう。
　たしかに、ドスの効いたいい声をしている。
　このほか、ドゥルー・ヒル、レッドマン、スヌープ・ドッグ、メイシー・グレイ＆スリック・リックらそれぞれが佳曲を提供している。
　これで初回プレス1980円（日本盤）なのだから、評判になるのは当然だろう。

　女性ハードコア・ラッパー、フォクシー・ブラウンと組んだ宇多田ヒカルは、彼女がこのジャンルが大好きだということが了解できる程度（英語詞）。