オヤジ殺しの時代錯誤CD(?)『スナック・マミ』
Sony
 中高年マーケットを狙った復刻CDが、近ごろよく見かけるようになった。
 たとえば一時代前の化粧品キャンペーン・ソングをまとめた『Rouge〜COSMETIC GRAFFITI』(BMG)には、桑名正博の「セクシャルバイオレットNo.1」(79年)やツイストの「燃えろいい女」(同年)などの大ヒットが収録されている。おそらくこういった歌は、今の若年層にはまるで興味を惹かないものだろう。昨年に発売されて話題になった『ちょんまげ天国』(ソニー、写真)は、ある年齢以上の人たちにとっては懐かしく、知らなかった人たちにとっては思わず笑ってしまうといった好企画だった。このアルバムには杉良太郎の「水戸黄門」や舟木一夫の「銭形平次」などテレビ時代劇の定番ソングが並べられている。
 ビクターからは、2003年6月21日に『酒場ロック』と『スナック・マミ』の2枚が発売される。この2枚は、男たちが飲みに出かけるといえば「スナック」と「ウィスキー」が、キーワードとなっていた「あの時代」に焦点を当てたオムニバス。前者は河島英五の「酒と泪と男と女」、もんた&ブラザーズの「ダンシング・オ−ルナイト」と、フォーク〜ロックのシンガーたちが歌謡界にもまれて境界線がぐずぐずになってきたありさまが、今だからこそちょっとした感慨と共によく理解できる作品だ。
 
amazon.com-『ちょんまげ天国〜TV時代劇音楽集』
 
Victor
『スナック・マミ』は、さらに年代を上に設定し、今の50代のオヤジに焦点を当てたかのような演歌もののオムニバスだ。
 ラインナップは、松尾和子「再会」、藤圭子「圭子の夢は夜ひらく」、加藤登紀子「ひとり寝の子守唄」、梓みちよ「二人でお酒を」、北原ミレイ「ざんげの値打ちもない」といった、30年ほど前の「女唄」のヒットである。
 この中で最も迫力があるのは、なんと言っても青江美奈。すでに故人となった青江だが、その強烈でエロチックなハスキー・ボイスは唯一無二の存在であったことをこのアルバムでも証明してくれた(「池袋の夜」「新宿サタデー・ナイト」の2曲を収録)。
 60年代の西田佐知子(関口宏の妻)もそうだが、こういうスタイリストはもっと再評価されるべきだろう。
 このほか松尾和子のメランコリックな「再会」が、ム所に入ったヤクザ者の情婦の歌であることなど、今では考えられない設定もある。藤圭子らの歌もそうだが、人生に翻弄され過去を引きずるこれらの歌から理解できることは、当時の「女唄」とは<夜の蝶>という一定のイメージの中へ押し込んだ上で「醸造・醗酵・瓶詰め」したものであるということだ。それをバカな男たちは、「女の真実」と手前勝手に鵜呑みにし操られ酔っ払っていたことを、しみじみと納得させてくれるオムニバスとなっている。

amazon.com-『スナック・マミ』
amazon.com-『酒場ロック』

( 2003/06/14 )

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