愛すべきポップ・クラシックの好盤『シャルロット・チャーチ/エンチャントメント』
ソニー SICP18
 クラシックを歌う美少女として12歳でデビューし、その後、3年の間に全世界で800万枚のセールスを上げたシャルロット・チャーチの4枚目となる新作が発売された(2001年11月7日)。
 今回のアルバムは、ポップ・フォークやケルトの伝承歌、映画音楽と、「クラシックのソプラノ・シンガー」と聞いて毛嫌いする人たちにも親しみやすい選曲になっている。
 収録曲は、映画『ウェストサイド物語』から「トゥナイト」「サムホェア」、ビゼーの「カルメン」、映画『南太平洋』から「バリ・ハイ」、子守り唄「ザ・リトル・ホーセズ」、サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」など、日本盤用のボーナス・トラック2曲を含めて全17トラック。
 プロデュースは、バネッサ・ウィリアムズほかを手がけたキース・トーマスが中心となり、このアルバムの「売り」の1曲である「ザ・プレイヤー」(ジョッシュ・グロバンとのデュエット)では、同曲の作者であるデイビッド・フォスターが担当している。
 シャルロット・チャーチが『エンチャントメント』で、これまで以上に広く支持層を広げようとしていることは、例えば「ハバネラ」のアレンジに聞くことができる。 
「ハバネラ」でのチャーチのボーカルは正攻法の歌唱なのだが、バックの演奏には、スパニッシュ・ギターに加えて、アフロ・ブラジルのパーカッション・アンサンブルが大々的に配されているのだ。
 彼女自身による解説文では、アレンジャーと二人で「(原曲よりも)もっとファンキーで、スパニッシュの雰囲気を出そうと決めた」と書いているが、たしかに大胆で、クラシックらしくない「ファンキーさ」が出ている。
 いっぽう、女性らしさと、彼女の若々しさもにじみ出たボーカルを聞くのであれば、映画『愛のイエントル』の「パパ、私の声が聞える?」や「フラワー・デュエット」などが、ぴったりだろう。
 この2曲に続く子守り唄「ザ・リトル・ホーセズ」は、ボーカルのアプローチをポップ寄りにして歌の肌触りを変えているが、こういった柔軟性は、彼女の大きな特色のはずである。
 しかもシャルロットのボーカルには、いかにも学校で勉強しましたといった凡百のクラシック歌手が持つ「おごり」や「権威」といった体臭がなく、反対に「この子は、好きで歌っている」と確信させる「歌に表わされた微笑み」といったものがある。
 ジェシ・クックの編曲が冴えるサティの「フロム・マイ・ファースト・モーメント」などは、その典型だろう。
 歌手として、今後、大きく成長するであろうことを予感させる、15歳の少女のニュー・アルバムである。
 
Charlotte Church official site http://www.charlottechurch.com/
Amazon.co.jp−シャルロット・チャーチ『エンチャントメント』
 
 

( 2001/11/06 )

Otis Redding & His Orchestra"Live On The Sunset Strip"
20年の軌跡を綴る新録2枚組ベスト『HISTORIA / DIAMANTES』
Singin' from Yaeyama:彩風の新作『彩花』
あんたら/ほんまに/頑張ってください 『LAUGH IT OUT』RIZE with 隼人
テイチクからリリースされた沖縄音楽の好企画
琉神マブヤーから、ついにおにぎりパパになったアルベルト
DVD『嘉手苅林昌追善公演 白雲ぬ如に…』
サンボマスター『きみのためにつよくなりたい』:400メートル爆走気味に表現する「若さ」
カントリー・ボーイの今を歌う:池田卓『風月花日鳥曜日』
ついに出ましたよ、上原知子の島唄集『多幸山』
岡林信康の復刻スタート:『わたしを断罪せよ』
古謝美佐子8年ぶりの新作『廻る命』
マンボラマTokyo推薦:名作登場!フアン・ルイス・グエラの新作『Llave de Mi Corazon』
反ブッシュでグラミー受賞のカントリー3人組:『テイキング・ザ・ロング・ウェイ/ディキシー・チックス』
「マンボラマToyko」推薦CD:R.バレット、ブーガルー期の代表作『アシッド』
明るいエイズ・ソング「ディマクコンダ」by山田耕平
「マンボラマToyko」推薦CD:ジョニー・パチェーコ『ア・マン・アンド・ヒズ・ミュージック エル・マエストロ』
「マンボラマToyko」推薦CD:ジョー・バターンのアルバムが続々
マンボラマTokyo推薦CD:エディ・パルミエリ/アット・ザ・ユニヴァーシティ・オブ・プエルト・リコ
10年ぶりの名録音:大城美佐子/唄ウムイ
シャルロット・チャーチ
愛すべきポップ・クラシックの好盤『シャルロット・チャーチ/エンチャントメント』
シャルロット・チャーチのテロ発言が英米で議論の的に
2001年の英国・御前演奏会はサー・エルトン・ジョンがトリ
表紙へ戻る