井筒監督、ホンマに怒ってはる:『パッチギ! Love&Peace』
シネカノン
 最初の映画がヒットしてその続編シリーズが生まれることは珍しくない。年寄りボクサーの復活やらクモ男やら、最近でも枚挙にいとまがない。井筒和幸監督の『パッチギ!』もその一つだが、「在日」という日本のタブーを描いて大いに話題になった「1」の「次」であるだけに、この難しいテーマを続編でさらに監督がどう出るのか、各方面から注目されている(2007年5月19日ロードショウ公開)。 
 続編『パッチギ! Love&Peace』は東京、朝鮮人居住区に暮らす人たちの話である。1974年から75年にかけての、江東区枝川。「1」が学生運動とフォーク・ミュージックの京都市中、時代が60年代末であるのに対して、「2」は高度成長期が終わるまさにその時である。「1」に登場した兄妹はわけあって東京に暮らすようになっていた…。
 東京が舞台。でも、映画のテーマはそこにない。「在日」そのものがテーマなのである。
「1」が「京都の青春」であるのならば、「2」で井筒監督は、彼ら(あるいは私たち)はなぜ日本で生きているのかにポイントを絞っている。「ここ」でなぜ、彼ら・私たちは、生きているかのか。カメラは朝鮮人居住区を出て、在日だらけの芸能界に、密貿易の玄界灘に、そして父や同胞が逃げ惑った故郷の済州島、殺戮の南洋・ヤップ島にと何度も切り替わる。
 大日本帝国の半島侵略、太平洋戦争、強制連行、いわゆる従軍慰安婦問題、民族差別、貧困……これらマイナスの遺産を日本からたっぷりと請け負わされながら、在日は「ここ」に生きている。たとえば、難病を患った息子(今井悠貴)のために主人公(井坂俊哉)は密貿易に手を染める。あるいは、主人公の妹(中村ゆり)は、人生の出口を求めて「泥水」を呑みながらも芸能界の階段を上りつめてゆく。二人の行動は難病の子チャンスを救うという同じ思いでつながってはいるが、それぞれが選択した道の背後には「ニッポンの歴史」が厳然としてあるのだと、映画は全編で語り描き上げてみせる。
 もちろん井筒監督は、娯楽性にこだわる人だから、この日本社会の暗部を、時に泣かせて笑わせて、さらに映画の始まりとラストには大乱闘シーンと、エンタテインメントのてんこ盛りだ。辛気くさくないし、もちろん「告発型」「社会派」でもない。むしろ言葉のニュアンスとして「この監督、ホンマに怒ってはる」という感じ。そしてそのニュアンス・肌触りなのだが、時に笑えたりするのが井筒監督の映像作家としての「味」だろう。
「言わなアカンやろ」「隠したらアカンやろ」の精神だね。
 東京をテーマとした映画としても画期的のはずである。
 在日だらけの芸能界にあって(映画ではっきりと語られる)、未だに在日であることを隠さなければならない、そんな日本社会の虚構性、抑圧。人気アイドルとなった妹キョンジャがヒロインとして大抜擢されたのが、特攻隊員を美化した映画だったというのは強烈な皮肉だし、この劇中映画が同じ5月に公開される『俺は、君のためにこそ死にに行く』(石原慎太郎製作総指揮、新城卓監督/2007年5月12日公開)と何だか似ているというのも……ほほぉ、なのだった。
 井筒監督、いい喧嘩してる。
(文・藤田正)

パッチギ! Love&Peace』公式サイト:
http://www.pacchigi.jp/loveandpeace/

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( 2007/05/03 )

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